膵臓癌の手術から4か月経った6月末には、サッカーの公式戦にフル出場。昔はどんなにダイエットしても78キロまで落とすのが限界だったのに72キロまで体重が落ち、毎日の筋トレのお陰でかなり締まった身体になっていたので、これまでに無く軽やかにサッカーができる様になっていた。それまで控えていた友人との外食のイベントも入れ始め、8月には息子夫婦とシンガポールに遊びに行く予定を立てていた。
もう完全に膵臓癌からは回復し、昔以上に健康な身体になったと思っていたのだが、、、
7月頭のM先生との診断の際、M先生は血液検査のそれぞれの項目を上から指で追いながら「ああ、相変わらず良い数値ですね。。。。あれ?」と最後の項目でM先生の指が止まった。膵臓癌の腫瘍マーカーであるCA19-9が550近い数値になっていた。CA19-9は37以下が正常値で、それまでの検査では37を超えた事が無かったのだが、突然高い数値になっていたのだ。CA19-9は膵臓癌以外でも高い数値になる事があるのでこれで膵臓癌が再発したと断定はできない、ただ次の診断は普通だったら6週間後だが早めに確認した方が良いので3週間後にもう一度血液検査をしましょう、という事で7月下旬に又病院に行くこととなった。
体調に全く悪いところが無くかえって過去10年の中で一番軽やかに動けるくらいだったので、これは癌じゃ無いだろう、きっと発症はしていないが最近流行っているコロナかインフルエンザに感染していたので血液検査の数値が悪かったのだろう、と妻とは話をしていた。もともと私は家族がインフルエンザに罹っても自分は発症しないような病気に感染しにくいタイプだったのだが、本当は感染はしているが発熱等の症状が出ない所謂スーパースプレッタータイプの体質なのだろうと思っており、そのころ周りの人で何人かコロナに感染していた人がいたので、私もコロナの発症はしていないが感染はしていてそれがCA19-9の数値を悪くしたのだろう、というのが勝手で希望的な自分たちの想像だった。
7月は仕事も忙しく、夜の友人たちとの食事会も入り、週末のサッカーや畑仕事でも忙しい日々を過ごしていたので、膵臓癌再発の可能性という事をあまり深刻に考える事も無く3週間後再び血液検査を受けたのだが、CA19-9は更に高い1800弱の数値となっていた。M先生からは、私の膵臓癌は低分化型の膵臓癌だったので通常の癌より悪性度が高く予後が悪いものだった事をこの時教えてもらった。
癌とはもともとの細胞が持つ役割から逸脱してしまった細胞組織だが、元の細胞に近いところまで分化が進んだものを高分化癌、元の細胞とはかけ離れた構造のものを低分化癌と呼ぶそうで、低分化癌は予後が悪く進行が速いもの。癌の多くは高分化癌だが、私の癌は低分化癌という予後の悪い膵臓癌の中でも更にたちの悪い種類のものだったようだ。
これは再発の可能性が高いのでCTを撮って確認しようという事で、急遽その翌週にCTを撮る事となった。CTの一週間後にM先生との診断の予約を入れていたのだが、CT撮影の数日後の仕事中に私の携帯電話に突然K病院から電話が掛かってきた。M先生だった。CT撮影の結果肝臓への転移が確認できたとの事。術後の転移の場合は外科医では無く内科医が担当する事になるそうで、出来るだけ早めに対応した方が良いので診断日を待たずに電話をしてくれたとの事。申し訳なさそうな口調で話すM先生の声を聴きながら、M先生も大変な手術をやったのに再発してしまったのは悔しいのだろうななどと他人事の様に考えながら、低分化癌だったという話を聞いていたのである程度覚悟していた事もあり思ったより冷静にM先生の話を聞く事が出来た。内科医としての担当は術前にお世話になったI先生になるそうで、その電話でI先生とのアポを取ってもらった。
こうして術後には会う事にならない方が良い、と言っていたI先生に再びお世話になる事となった。
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