セカンドオピニオンの診断の日に外科部長の方にはこちらの市立K病院に転院したい意向を伝えたところ、その翌週に内科の方とのアポイントを入れてもらう事が出来た。
内科の担当医I先生との最初の診断の日、当日撮ったレントゲンと血液検査の結果を見ながら肝臓の数値がかなり悪化していると告げられた。I先生からは、肝臓に影がいくつか出ているが癌の転移では無いようにも見えるので、その可能性を考えた治療も含め急遽入院し治療を始めたいとの説明だった。ただし肝臓に転移している可能性はあり、膵臓癌の難しさステージ4の厳しさを正直に説明してくれ、膵臓癌の完治の為には手術が必要な事、転移しているステージ4だと手術は出来ない事、自分の過去の経験で転移は無いと思って手術に踏み切ったがその後肝臓への転移が発覚してしまった事がある事など、厳しい話もストレートにわかりやすく説明してくれた。
その日そのまま入院したが、その晩病院のベッドから自分が膵臓癌で入院した事をFacebookで公表した。これがその後の膵臓癌との闘いの中でとても役に立つ正しい選択だった。
その時点での私の理解は、膵臓癌ステージ4というのは5年生存率1.2%~1.6%というネットの情報のみ。しかもネットで癌の事を検索すると本当に色々な玉石混交な情報が氾濫しており、どれが本当でどれが嘘なのか判別しづらく何を信じていいのかわからい状態だった。
なかなか厳しい相手を目の前にして自分一人で乗り切るのは厳しいので仲間の応援が欲しく、又私の友人の中にはきっと癌を乗り越えたサバイバーが大勢居るだろうからそういう人達からのアドバイスが欲しかったのだが、これが大正解。
一晩のうちに300人近い友人から応援のメッセージが届いただけで無く、癌サバイバーの友人・知人からアドバイスをもらう事が出来たが、それらをまとめたのが以下。
・前向きでポジティブでいること。
・これまで以上に日々の暮らしを楽しむこと。
・やりたいことを思いっきりやること。
・しっかりと体を動かすこと。
・抗癌剤でどんなに辛くとも食べ、食べ、食べる事。
その後ネットで膵臓癌の事を調べていく中で1週間後にようやく膵臓癌サバイバーの方の情報や膵臓癌の専門医の方で信頼して良さそうな方の情報に辿り着いたのだが、上記のFacebookで公表した翌日に得た情報はまさにそういう膵臓癌サバイバーや専門医の方が言っている事そのものだったのだ。
その後、癌患者にとっての筋肉トレーニングの大事さを学んだのだが、Facebookからの応援をもらえたお陰で毎日しっかりと筋肉トレーニングを継続する事が出来ただけで無く、Facebookで何十年ぶりに連絡の取れた友人たちと会う為に癌治療を前向きに進める事が出来た。Facebookは私にとっては癌と闘う中でとても重要で役立つメディアとなってくれたのだ。
入院後2日目に突然体調が悪化した。朝起きてラジオ体操をするまでは全く快調だったのだが、病院内のコンビニで買い物をして歩いて病室に戻る途中に急に気分が悪くなり、這うようにして病室に辿り着いた時には腹部の激痛のためベッドでのたうち回るような状態になった。ナースコールを押し医師・看護士の方が大勢駆けつけてくれ、座薬を入れてもらう事で何とか激痛は治まったが、人生これまで経験した事の無い様な激痛だった。
ちなみに、これは胆管に膿が詰まってしまい閉そく状態になった為の痛みだったのだが、胆管閉そくの痛みというのは人間の経験する三大痛みの一つと呼ばれる事もあるほどの痛みだそうで、膵臓癌になると今後この痛みと付き合わないといけなくなるのかと思うとちょっと先行きに暗いものを感じたが、Facebookの友人のメッセージを何度も読み返しながら、激痛ではあったが同時に座薬を入れただけで激痛は治まるのだから何とかなる、Facebook上で癌と前向きに闘う宣言をしたばかりなのだから弱音は吐けない、とベッドの上で自分を鼓舞していた。
その日のうちに再度内視鏡で検査したところ、胆管ステントが膿で詰まってしまっていた為、胆管ステントを2本挿入した上で胆管ステントに細い管を入れそれを鼻から出して膿を吸い出せるような処置を取る事となった。胆管ステントから伸びた管は1日中食道・鼻経由で膿を入れる為のビニール袋に繋ぎっぱなしにしておき膿が出たら体外に出せるようにした上で、朝夕2回生理食塩水を注射器で出し入れし胆管ステントに貯まった膿を洗って吸い出すという処置を始めたが、最初の数日は医師も驚くほど多くの膿が出てきたので、肝臓の影は癌の転移では無くこの膿が映っていた可能性があるとの判断でそのままその処置を10日ほど継続。同時に2週間抗生物質の点滴を行う事で肝臓の炎症による膿の可能性を叩く治療を行った。
鼻から喉に常に管が通っているというのはちょっと喉がイガイガして気持ち悪いのだが、それ以外全く体調は悪く無く、医師からも入院中も運動をした方が良いとの話があったので、連日の筋トレ・病棟内のウォーキングに加え病棟の階段の上り下りをするような健康的な生活をして2週間を過ごした。鼻の管から出てくる膿は1週間もすると消え、2週間の抗生物質の点滴が終わった頃には血液検査の項目も安定したものになり、もう抗癌剤を始めても大丈夫だろうとの事となった。
私の場合は膵臓にある癌の大きさはステージ2B相当。膵臓癌の場合転移のあるステージ4の場合手術は不可能なので、その場合は抗癌剤治療を行いもし転移が無くなったら手術は可能となる。転移の無いステージ2Bの場合でも手術前に2か月間抗癌剤治療を行うというのが今の標準治療なので、いずれ場合でもまずは抗癌剤治療を始める予定だったが、同時にI先生は私の肝臓の影が癌の転移では無い可能性もあるので、まずはCTを撮って確認しようという事となった。
一連の肝臓の炎症に対する入院治療の後でもまだ肝臓に影が残っているようだったらその影は癌と思われるので肝臓への転移のあるステージ4、もし肝臓の影が消えたようだったら肝臓に癌は転移していないので手術による根治治療が可能なステージ2Bという判断。今後の治療に大きな違いが出てくるCTの結果をどきどきしながら待っていたのだが、病棟の廊下をI先生が大きな笑顔を浮かべて「ヒロさん、影消えたよ。」と走ってくるのを見た時は本当に安堵した。
これで無事手術は出来る事となったが、その前には2ヵ月の通院での抗癌剤治療が必要。退院翌月の1月は仕事がかなり忙しくなる予定で、抗癌剤治療をしながら業務をきちんとこなす事が出来るのか、本当に仕事の予定を入れていて良いのか不安な気持ちを抱えながらの抗癌剤治療が始まろうとしていた。
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